オルファクトリーフレイル学会について

「嗅ぐ力（嗅覚）」は、食事の楽しみや日常の安全、感情の豊かさに深く関わる大切な感覚です。しかし、その重要性はまだ十分に認識されておらず、加齢はもちろん、耳鼻咽喉科的な疾患や新型コロナウイルス感染症などによっても衰えることがあります。

私たちは、嗅覚の衰えを「オルファクトリーフレイル（嗅覚の虚弱化）」と捉え、これを新たな健康課題として社会に提示します。

オルファクトリーフレイル学会は、医学・看護学・神経科学・生理学・医工学・アートなど多分野の研究者が連携し、嗅覚に関する研究・評価・トレーニング・啓発活動を展開する、新しい学際的プラットフォームです。

嗅覚のケアは、高齢者だけでなく、すべての世代にとって大切なテーマです。

「鼻に健康を！ 人生に喜びを！」をスローガンに、科学的根拠と創造的アプローチの融合を試み、嗅覚の維持を通して人々の健康とQOL（生活の質）の向上に寄与することを目指します。

学会の目的

本学会は、オルファクトリーフレイルに関する以下の活動を通じて、人々の健康とQOLの向上に寄与することを目的とします。

• 研究および調査の推進

• 学術講演会・研究会・セミナー等の開催

• 情報の社会発信と普及活動

• 国内外の関連団体・企業との連携

役員一覧

代表理事

杉原百合⼦（同志社⼥⼦⼤学看護学部看護学科　教授／⾼齢者看護学）

副代表理事（五十音順）

岩﨑陽⼦（嵯峨美術短期⼤学美術学科　教授／美学・哲学・嗅覚アート）

三輪⾼喜（⾦沢医科⼤学医学部　名誉教授／⽿⿐咽喉科学）

理事（五十音順）

William Ross Hall（嵯峨美術⼤学芸術学部造形学科 准教授／メディアアート）

外池光雄（⼤阪⼤学大学院医学系研究科　招聘教授／脳神経科学・⽣体医⼯学）

林 拓世 （藍野⼤学医療保健学部　講師／応⽤情報学・⼯学）

眞部寛之（奈良県⽴医科⼤学医学部　准教授／神経⽣理学）

⼭縣恵美（同志社⼥⼦⼤学看護学部看護学科　准教授／⾼齢者看護学）

代表理事挨拶

皆さまはご自身の「嗅ぐ力」―すなわち嗅覚について、日頃どの程度意識されているでしょうか。

「視る力」は視力、「聴く力」は聴力といったように、私たちは多くの感覚に馴染みのある名称を持っていますが、「嗅ぐ力」は日常生活の中であまり意識されることがなく、「嗅力」といった言葉も一般的ではありません。嗅覚を測定した経験のある方もほとんどいらっしゃらないのが現状です。

しかしこの「嗅ぐ力」は、私たちの生活の質、安全、そして感情の豊かさに深く関わる、非常に重要な機能です。

ガス漏れや焦げた匂い、食べ物の腐敗に気づけないことによる事故、食欲の低下や味覚の変化、そして花の香りや果物の匂いを楽しめなくなることで失われる日常の小さな喜び――これらはすべて、嗅覚の衰えによってもたらされます。

また、匂いは記憶や感情と深く結びついており、ふと漂ってきた香りが昔の情景を鮮やかに呼び起こす―そんな経験をされた方も多いことでしょう。これは「プルースト効果」としても知られており、嗅覚が私たちの心に与える影響の大きさを物語っています。

さらに、嗅覚の低下は認知症リスクや、死亡率の上昇とも関係するという報告もあり、近年その重要性があらためて注目されています。それにもかかわらず、社会全体としての理解や支援体制は、まだ十分とは言えません。

私たちはこの「嗅ぐ力」の衰えを「オルファクトリーフレイル（嗅覚の虚弱化）」と捉え、新たな健康課題として多方面から取り組むべく、さまざまな分野の研究者が結集し、本学会を設立いたしました。

医学、看護学、脳神経科学、神経生理学、医工学といった医学的分野に加え、美学やメディアアートの専門家も参加している点は、本学会の大きな特徴の一つです。たとえば、嗅覚トレーニングにおいては「匂いをどうイメージするか」が非常に重要であり、そのような働きかけにおいて、アートが果たす役割は大きなものがあります。

本学会では、嗅覚に関する科学的研究や評価手法の開発、予防・介入に向けた実践活動、そしてそれらの知見を地域や多世代に還元することを目的に、活動を展開してまいります。

嗅覚の虚弱化は高齢化によるものだけでなく、新型コロナウイルス感染後の後遺症や、花粉症などの現代病によっても引き起こされることから、あらゆる世代が向き合うべき課題であると考えています。

私たちのスローガンは、

「鼻に健康を！ 人生に喜びを！～La Vie en Nose（ラ・ヴィ・アン・ノーズ）」です。

嗅覚を維持することは、人生をより豊かにし、大きな喜びへと繋がると思います。

  皆さまのあたたかいご理解とご支援を、心よりお願い申し上げます。